ニューヨーク市のマムダニ市長が、イスラエルのネタニヤフ首相を逮捕する法的可能性を市の法務部門と検討している。そう報じられたのが7月中旬のことである。9月には国連総会が開かれる。会場はニューヨークであり、ネタニヤフ首相が演説のために訪れる可能性は十分にある。
国際刑事裁判所(ICC)は2024年11月21日、ネタニヤフ首相に対し、ガザでの行為をめぐる戦争犯罪と人道に対する罪の容疑で逮捕状を発付した。逮捕状は有罪を認定するものではない。犯罪を行ったと信じるに足る合理的な根拠があるとして、身柄の確保を求める措置である。発付から1年8ヶ月、イスラエル側は繰り返し取消しを求めてきたが、逮捕状は取り消されていない。現在もICCの被疑者ページに掲載されている。
しかし、ICCは自前の警察を持たないため、執行は締約国の協力に委ねられている。その締約国ハンガリーは2025年4月、ネタニヤフ首相の訪問を受け入れ、逮捕しなかった。同じ時期、ハンガリー政府はICCからの脱退を表明している。ICCは同年7月、これを協力義務違反と認定した。制度上、できるのはそこまでである。
そこにマムダニ市長の発言が出てきた。だが米国はICCの締約国ではない。2000年にローマ規程へ署名したものの批准せず、2002年には「締約国になる意思はない」と国連に通知している。つまり米国には、ICCの逮捕状を執行する義務がない。
義務がないだけではない。連邦法22 U.S.C. §7423は、州や地方政府の機関がICCの協力要請に応じることを禁じている。市長が逮捕を検討しても、根拠となる法律がない。代わりに、協力を禁じる法律ならある。
そして7月20日、トランプ大統領は「ネタニヤフ氏が米国で逮捕されることはない」と明言した。
逮捕状は有効である。市長には意思がある。連邦法は禁じている。大統領は逮捕させないと言う。
この間もガザでは、飢餓と民間人の死が国際機関の報告書に記録され続けている。逮捕状の根拠となった状況は、終わっていない。
法が有効なまま執行されない状態を、秩序と呼べるのか。9月、ニューヨークでネタニヤフ氏は歓迎されるのか。問われているのは、国際法そのものである。








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